
【決定版】アラビア語に似た言語・文字は?ヘブライ語から日本語との意外な共通点まですべて解説
「このくねくねした文字はアラビア語?それとも違う言葉?」
「アラビア語と似ている言語って何があるの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
実は、世界には「アラビア文字を使っているけれどアラビア語ではない言語」や、「文字は違うけれどアラビア語と兄弟のような言語」がたくさん存在します。さらには、遠く離れた日本語との不思議な共通点も……?
ここでは、「アラビア語に似た〇〇」に関する疑問を、文字・言語・日本語の3つの視点から完全解説していきます。
【見た目が似ている】アラビア文字を使う別の言語
まず一番多い疑問が、「文字がアラビア語に見えるけれど、実は違う言語」です。
英語やフランス語が同じ「アルファベット」を使うように、中東やアジアの多くの言語が「アラビア文字」を使用しています。これらは見た目はそっくりですが、文法や単語は全く違う言語であることが多いです。
① ペルシア語(イラン)
アラビア語と最も間違われやすいのが、イランの公用語であるペルシア語(ファルシ)です。
アラビア文字を基本としていますが、ペルシア語特有の音(P, ch, g, zh)を表すために、点の数や線が増えた独自の文字が4つ追加されています。
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見分け方: アラビア語にはない「ガ(گ)」「パ(پ)」「チャ(چ)」「ジェ(ژ)」という文字が含まれていたらペルシア語の可能性大です。
② ウルドゥー語(パキスタン)
パキスタンの公用語ウルドゥー語もアラビア文字を使用します。
最大の特徴は、書体のスタイルです。アラビア語は横に流れるような「ナスフ体」が一般的ですが、ウルドゥー語は右下がりになる「ナスタリーク体」という独特の筆記体のようなフォントを好んで使います。
③ その他(ウイグル語、オスマン語など)
中国のウイグル語や、かつてのオスマン帝国時代のトルコ語(オスマン語)もアラビア文字を使用していました。マレー語の一部(ジャウィ文字)もこれに該当します。
これらは「見た目(文字)はアラビア語に似ているが、言葉の中身は別物」というグループです。
【中身が似ている】言語学的な親戚(セム語派)
次は、文字は違うかもしれないけれど、文法や単語のルーツがアラビア語と非常に似ている「親戚の言語」です。これらは言語学的に「アフロ・アジア語族のセム語派」と呼ばれます。
① ヘブライ語(イスラエル)
ユダヤ教の聖書に使われるヘブライ語は、アラビア語の兄弟言語と言えるほど似ています。
文字(ヘブライ文字)はカクカクしていてアラビア文字と全く違いますが、文法の仕組み(語根システム)や単語は驚くほど共通しています。
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例: 平和
- アラビア語:サラーム (Salam)
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ヘブライ語:シャローム (Shalom)
② マルタ語(マルタ共和国)
地中海の島国マルタで話されるマルタ語は、非常に特殊な例です。
実はマルタ語は、「アラビア語の方言が独自に進化したもの」であり、言語学的にはアラビア語に極めて近いです。しかし、キリスト教圏であるため「ラテン文字(アルファベット)」で書かれます。
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特徴: 文字は英語と同じアルファベットなのに、聞いてみるとアラビア語の方言にそっくり、という不思議な言語です。
③ アムハラ語(エチオピア)
エチオピアの公用語アムハラ語も、アラビア語と同じセム語派の遠い親戚です。独自の文字を使いますが、文法構造に共通点が見られます。
【影響を受けた】アラビア語由来の単語が多い言語
アラビア語は歴史的に強力な言語だったため、全く関係のない言語にも大量の「借用語」を輸出しています。
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スペイン語
かつてイスラム教徒が支配していた歴史があるため、「アル(al)」で始まる単語(Alcalde, Alcoholなど)の多くはアラビア語由来です。 -
トルコ語
現在はアルファベットを使いますが、単語の多くはアラビア語やペルシア語からの借用です。 -
スワヒリ語
アフリカ東岸の言語ですが、アラビア語の影響を強く受けており、「サファリ(旅)」などの単語はアラビア語が語源です。
【空耳?】アラビア語と日本語は似ているのか
最後に、検索されることが多い「アラビア語と日本語が似ている」説についてです。
結論から言うと、言語学的なつながりは全くありません。
しかし、母音の構造が似ているためか、「空耳」として聞こえる単語がいくつか存在し、ネタとして親しまれています。

有名な「似ている」単語(空耳)
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「アンタ」
アラビア語でも「あなた(男性)」を「アンタ (Anta)」と言います。これは偶然の一致ですが、覚えやすいですね。 -
「ワラ」
アラビア語で「子供」を「ワラド」と言いますが、方言で「ワラ」と聞こえることがあり、日本の古語「童(わらわ)」に似ていると言われます。 -
「アホ」
アラビア語で「兄弟」を「アフ」と言いますが、方言によっては「アホ」に近く聞こえることがあります。
意外な共通点:文法的な類似性はゼロ
日本語は「膠着語」、アラビア語は「屈折語」であり、文法の作りは正反対です。しかし、一部の挨拶や発音の響きが日本人の耳に馴染みやすいため、「似ている」と感じる人が多いようです。
【Q&A】アラビア語の「似ている」に関する疑問を一発解決!
ここを読めば全て分かる!よくある疑問をまとめました。
Q1.アラビア語に一番似ている言語は何ですか?
A. 言語学的には「マルタ語」と「ヘブライ語」です。
特にマルタ語はアラビア語の方言から派生したため、会話レベルではかなり近いです。ヘブライ語は兄弟言語で、単語のルーツが共通しています。
Q2.文字がアラビア語に見えるけど読めない…これは何語?
A. 「ペルシア語」か「ウルドゥー語」の可能性が高いです。
文字の下や上に「点が3つ」ある文字が含まれていたらペルシア語、文字全体が右下がりに書かれていたらウルドゥー語である場合が多いです。
Q3. トルコ語はアラビア語に似ていますか?
A. 単語は似ていますが、文法や文字は別物です。
昔(オスマン帝国時代)はアラビア文字を使っていましたが、現在は英語と同じアルファベットを使っています。ただし、アラビア語由来の単語はたくさん残っています。
Q4. 日本語とアラビア語が似ているって本当?
A. 文法は全く似ていませんが、発音は似ています。
母音(あいうえお)がはっきりしている点が似ているため、日本人はアラビア語の発音がしやすく、逆もまた然りです。「アンタ(あなた)」のような偶然の一致も多いです。
(ミニ・アラビア語講座)似ている単語を覚えよう
せっかくなので、今回ご紹介した「日本語やヘブライ語に似ている単語」を1つ覚えて帰りましょう!
その①:「あなた」=「アンタ」
日本語の「あんた」と全く同じ発音・同じ意味です。
読み方:アンタ (Anta)
意味:あなた(男性に対して)
※女性に対しては「アンティ」になります。
その②:「平和」=「サラーム」
ヘブライ語の「シャローム」とそっくりな挨拶の言葉です。
読み方:サラーム (Salam)
意味:平和(こんにちは)
アラビア語の「似ている」は奥が深い
「アラビア語に似た言語」といっても、その中身は3つのパターンに分かれます。
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文字が似ている: ペルシア語、ウルドゥー語(中身は別物)
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ルーツが似ている: ヘブライ語、マルタ語(兄弟言語)
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響きが似ている: 日本語(他人の空似)
もし、あなたが「アラビア語のような文字」を見て、それが何語か分からなかったら、点の数や書き体をチェックしてみてください。そこには、中東の豊かな言語の歴史が隠されています。
最後に似ている言語の家系図一覧
世界には、約7,000もの言葉があると言われています。それぞれの言葉はバラバラに見えますが、実は多くが共通のルーツを持つ「家族」としてつながっているんです。
私たちが普段話す日本語にも、漢字があったり、英語由来の言葉があったりするように、世界の言葉にはそれぞれ「ルーツ」があります。アラビア語も、実は大きな「言葉の大家族」の一員です。
アラビア語が属するこの大家族の名前は「アフロ・アジア語族」の中の「セム語派(セム語族)」に属する言語です。
そして、この「家系図」を知れば、あなたが今学んでいるアラビア語や、知っている英語、日本語が、世界の言葉の中でどんな位置にあるのかが、きっと面白く見えてきます。




