
アラビア語の「ごちそうさま」実は存在しない?代わりに使える5つの感謝フレーズ
日本の食文化には、「いただきます」と「ごちそうさま」という、食事の始まりと終わりに感謝を伝える美しい習慣がありますよね。では、アラビア語圏の国々では、食事の後に何と言うのでしょうか?
実は、アラビア語に日本語の「ごちそうさま」にぴったり当てはまる言葉はありません。
「え、どうして?」と思いますよね。
ここでは、そんな意外な事実の背景にある文化的な理由から、代わりに使える便利なフレーズまで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
なぜ「ごちそうさま」が存在しない?
この疑問を解くカギは、食事に対する考え方の違いにあります。
日本では、「ごちそうさま」は「ご馳走(食事の準備で走り回るほどの苦労)」に対する感謝の気持ちを相手に伝える言葉です。つまり、人から受けた恩恵に対して「ありがとう」を伝える文化です。
一方、イスラム教徒にとって、食事はアッラー(神)からの恵みです。彼らは、食事をするたびに、その食べ物を与えてくれた神に感謝を捧げます。
このため、イスラム文化では、食事の直接「ごちそうさま」と人に伝える習慣はあまりありません。なぜなら、一番に感謝すべきは、食べ物を与えてくれた神だからです。もちろん、料理を作ってくれた人には別の言葉で感謝を伝えますが、「ごちそうさま」という言葉の根源にある「人への感謝」は、神への感謝に置き換えられています。
この文化的な背景が、アラビア語に「ごちそうさま」という言葉が存在しない最大の理由です。
食事の前後に使う、大切な3つの挨拶
「ごちそうさま」がなくても、食事の前後に感謝を伝える習慣はあります。
食事の前に使う言葉
بِسْمِ ٱللّٰهِ
(bismillah) – 「ビスミッラー」
これは「アッラーの御名において」という意味で、食事を始める前に唱える、いわば「いただきます」にあたる言葉です。
食事中に使う言葉
هَنِيئًا مَرِيئًا
(hanī’an marī’an) – 「ハニーアン マリーアン」
食事がおいしいことを伝える言葉で、相手に「おいしい食事を楽しんでね」という気持ちを込めて使います。
食事の後に使う言葉
食後には、これからご紹介するシチュエーション別「ごちそうさま」のフレーズを使います。
日本の「ごちそうさま」に代わる、アラビア語の便利なフレーズです。
感謝の気持ちを伝える一番の定番
الحَمْدُ لِلَّه
(al-ḥamdu li-llāh) – 「アルハムドゥリッラー」
「すべての賞賛はアッラーに」という意味で、食事が終わった後に最も一般的に使われる感謝の言葉です。
相手においしい食事をねぎらう
بِالصِّحَةِ وَالْعَافِيَةِ
(bi-ṣ-ṣiḥḥaẗi wa-l-ʿāfiyaẗi) – 「ビッサハ ワルアーフィヤ」
食事を終えた相手に対して、「健康と幸福のために」と、食事のおかげで体が健康になることを願う言葉です。まるで「お体に気をつけて」と相手を思いやるような、温かいフレーズです。
صَحَّةً وَعَافِيَةً
(ṣaḥḥatan wa-ʿāfiyatan) – 「サッハタン ワ アーフィヤタン」
上のフレーズの簡潔版です。親しい間柄でよく使われます。
料理そのものを褒める
لَذِيذ
(ladhīdh) – 「ラズィーズ」
食事そのものがおいしいことを伝えたい場合は、この言葉を使いましょう。日本語の「おいしい!」に当たります。
シンプルに感謝を伝える
شُكْرًا
(shukran) – 「シュクラン」
料理をごちそうしてもらった相手に、シンプルに「ありがとう」と伝えるのも良いでしょう。感謝の気持ちは、どの文化でも伝わります。
旅がもっと楽しくなる!アラビア語講座
旅先で現地の言葉を少しでも話せると、人との交流がぐっと楽しくなります。今回は、挨拶の基本となる「こんにちは」と「さようなら」を学んでみましょう。
こんにちは:مَرْحَبًا
(marhaban)
- カタカナ: マルハバ
- 発音のポイント:
مَر
: 「マル」と、舌を軽く巻くように発音します。حَبًا
: 喉の奥から息を出すような「ハ」の音で、「ハバン」と発音します。
この挨拶は、誰に対しても使える汎用性の高い言葉です。
さようなら:مَعَ السَّلاَمَةِ
(ma’a as-salāma)
- カタカナ: マアッサラーマ
- 発音のポイント:
مَعَ
: 「マア」と、最後に軽い息を吐くように発音します。السَّلاَمَةِ
: 「アッサラーマ」と、少し長めに「サー」と発音します。
「安全とともに」という意味があり、相手の無事を願う、温かい気持ちが込められています。
まとめ:食事は、神と人への感謝を伝える時間だった
「アラビア語に『ごちそうさま』がない」という意外な事実の裏には、「食事は神からの恵み」という深い文化的な背景があったのです。
- 「ごちそうさま」の代わりに、
الحَمْدُ لِلَّه
を使ってアッラーに感謝を伝えよう。 - 料理を作ってくれた人には、「おいしい!」や「ありがとう」の気持ちを伝えよう。
これらのフレーズを覚えておけば、アラビア語圏での食事が、これまでとは違う、特別な時間になるはずです。