
アラビア語とシンドバッドの深いつながり。アラビア語から解き明かす、名前の意外な真実!
冒険家シンドバッド。 空飛ぶじゅうたんに乗ったり、人食い鬼と戦ったり、彼の冒険はいつの時代も私たちをワクワクさせてくれますよね。
彼の物語がアラビア語で書かれた『千夜一夜物語』に登場することは、多くの人が知っているはずです。
しかし、もし彼の名前が、実はアラビア語ではなく、別の言語が語源だったとしたら?
そして、その名前が、日本語とも深い関係があったとしたら?
それでは、「シンドバッド」という名前の謎を解き明かしながら、アラビア語の言葉の面白さをご紹介します。
大前提:シンドバッドは実話ではなく、伝説の英雄
結論から言えば、シンドバッドは実在しません。彼は8世紀頃の船乗りたちの冒険談をもとに作られた、架空の人物です。
「え、実話じゃないの?」と思うかもしれませんが、だからこそ、彼の物語は自由で壮大なスケールになっています。まるで、金太郎や桃太郎のように、人々の夢や希望が詰まった伝説の英雄です。
意外な真実① シンドバッドの名前は、アラビア語ではない?
私たちが知っている「シンドバッド」という名前は、実はアラビア語が語源ではありません。彼の名前の本当のルーツは、ペルシャ語にあると考えられています。
「سند باد」(Sindibād)
これが、ペルシャ語での彼の名前です。アラビア語は、ペルシャ語から多くの言葉を取り入れているため、この名前もそのまま使われるようになったのです。彼の名前 سند باد
は、ペルシャ語でسند
(Sind)とباد
(bād)という二つの単語から成り立っています。
سند
(Sind): 古代ペルシャ語で「インド」を意味します。باد
(bād): ペルシャ語で「風」を意味します。
この二つを合わせると、シンドバッドの名前は文字通り「インドの風」となります。
発音も「シンドバッド」ではなく、「スィンディバード」に近い音です。 なぜこんなに違うのかというと、アラビア語にしかない音が日本語や英語に置き換えられたからです。英語圏に伝わる際に、発音しやすく形を変えました。
意外な真実② 彼が「船乗り」と呼ばれる理由
『千夜一夜物語』では、シンドバッドは単に「スィンディバード」と呼ばれるだけではありません。彼の正式な名前は、「سِنْدِبَاد الْبَحْرِيّ」(Sindibād al-Baḥrī)と言います。
この al-Baḥrī
(アル・バフリー)が、彼の職業である「船乗り」や、彼の冒険の舞台である「海」 を意味する言葉です。
つまり、彼の正式な名前は「海の男、スィンディバード」という意味になります。物語のタイトルそのものが、彼の偉大な冒険を語っています。
そして、なぜ「インドの風」が「海の冒険家」を意味するようになったのでしょうか?
それは、中世、アラブやペルシャの商人たちは、インド洋を船で旅して、インドや中国と交易をしていました。この広大な海を航海するために不可欠だったのが、季節によって吹く方向が変わる「季節風(モンスーン)」です。
インドへ向かう風、インドから戻る風。この風の流れを熟知し、風に乗って旅をする人々は、まさに「インドの風」の力を借りて海を冒険する者でした。彼の名前は、まさに当時の航海士たちの生き様を象徴しています。
つまり、「インドの風」は、インド洋を旅する人、つまり「海の冒険家」を意味する言葉として使われるようになりました。彼の名前そのものが、彼の冒険の舞台と旅のスタイルを物語っているなんて、とてもロマンチックだと思いませんか?
このように、シンドバッドの物語は単なるフィクションではなく、当時の人々の世界観や航海の知恵を映し出した、壮大な冒険譚なのです。
旅がもっと楽しくなる!アラビア語講座
今日の学習をさらに深めるために、物語に欠かせない、彼の冒険の舞台となったこの二つの言葉を覚えてみましょう。アラビア語の発音は、日本語にない音があるので、口の形を意識してみてください。
- インド:
هِنْد
(Hind)- カタカナ: ヒンドゥ
- 発音のポイント:
ه
(h): 日本語の「ハ」よりも、息を強く出すように発音します。
- 海:
بَحْر
(baḥr)- カタカナ: バハル
- 発音のポイント:
ب
(b): 日本語の「バ」よりも、少し唇を閉じて発音します。ح
(ḥ): 日本語にはない音です。喉の奥から息を吐き出すように、「ハー」と発音します。息が鏡に当たって曇るようなイメージです。
まとめ:アラビア語を学べば、物語の真実が見えてくる!
今回ご紹介した、シンドバッドの真実についての話は、いかがでしたか?
- シンドバッドは実在の人物ではなく、伝説の英雄だった!
- 本当の名前の語源は、ペルシャ語の「インドの風」だった!
- 彼の名前は、そのまま彼の冒険の舞台を意味していた!
アラビア語を学ぶことは、まるで魔法のじゅうたんに乗るようなものです。物語の新しい扉を開き、今まで知らなかった真実を発見できるかもしれません。