Lv.5 文化の宮殿

多様で奥深い文化を探索しながら、アラビア語圏でのコミュニケーションを深める!

【中東 楽器】アラブ・ペルシャの音楽を彩る、奥深い楽器の世界

「中東の楽器」と聞いて、あなたはどんな楽器を思い浮かべますか?

もしかしたら、ベリーダンスで使われる軽快なリズムを刻む太鼓や、どこか神秘的な音色を奏でる弦楽器を想像するかもしれません。

この記事では、そんな奥深い中東の楽器の世界を、初心者の方にも分かりやすく、そして楽しくご紹介します。読み終わる頃には、あなたも中東の音楽がもっと身近に感じられるはずです。


 

大前提:中東楽器は「アラブ」と「ペルシャ」

中東の音楽は、単一の文化ではなく、アラブ文化ペルシャ文化という、二つの大きな柱によって支えられています。

特に歴史的に、ペルシャ(現在のイラン)は音楽や芸術の中心地であり、多くの楽器がアラブ世界に伝わりました。そのため、中東の音楽を語る上で、この二つの文化は切り離すことができません。

ここでは、この二つの文化圏で共通して使われる、代表的な楽器に焦点を当てて解説していきます。


 

中東の楽器は「3つのグループ」に分けられる!

一口に中東の楽器と言っても、その種類は実に多様です。今回は、主に弦楽器打楽器管楽器の3つのグループに分けて見ていきましょう。

それぞれの楽器が、まるでオーケストラのメンバーのように、異なる役割を担い、複雑で美しいハーモニーを奏でています。


 

【弦楽器の王様】アラブ音楽の心臓「ウード」

アラブ音楽を語る上で、絶対に外せないのがこのウード(Oud)です。
  • 主な地域: アラビア語圏全域、特にエジプト、レバノン、イラク
  • 正体: 「ギターのご先祖様」として知られる、アラブを代表する弦楽器です。
  • 特徴: 丸みを帯びたボディと、フレット(弦を押さえるための仕切り)がないネックが特徴です。これによって、半音よりもさらに細かな音程を出すことができ、中東音楽特有の美しい旋律を生み出します。その音色は、温かく、どこか物悲しい雰囲気を持ち、聞く人の心を揺さぶります。
  • 役割: ウードは、アラブ音楽の主役であり、メロディーの中心を担います。

 

【リズムの神様】打楽器で踊る!「ダルブッカ」

中東の音楽に欠かせないのが、このダルブッカ(Darabukka)が刻む軽快なリズムです。
  • 主な地域: アラビア語圏全域、特にトルコ、エジプト、レバノンなど
  • 正体: 「アラブのドラムセット」とも呼ばれる、片手で抱えて叩く壺型の太鼓です。
  • 特徴: 指先や手のひらを使い分けることで、驚くほど多彩な音色を奏でます。高音の「ドン」という音や、低音の「タ」という音を組み合わせ、複雑なリズムパターンを作り出します。
  • 役割: ダンス音楽や祭りの場でリズムをリードする、音楽のエンジンのような存在です。

 

【幻想的な音色】弦楽器と打楽器の融合「カーヌーン」

一見するとハープのような形をしたこの楽器、カーヌーン(Qanun)も、中東音楽の重要な担い手です。
  • 主な地域: トルコ、イラン、アラビア語圏全域
  • 正体: 台形の箱に弦が張られた、アラブのハープとでも言うべき楽器です。
  • 特徴: 弦の数は70本以上にもなり、弦を指で弾いて音を出します。楽器の横についている小さなレバーを操作することで、音程を微調整できるのが特徴です。その音色は、非常に澄んでいて幻想的で、聞く人を遠い異国の世界へと誘います。
  • 役割: ウードと同様にメロディーを奏でますが、より華やかで豊かな音色で音楽を彩ります。

 

アラブ諸国で普段よく聞く楽器はどうなの?

普段私たちが耳にする楽器は、アラビア語で何と呼ばれているのか表にまとめました。

楽器名(日本語) アラビア語表記 カタカナ 備考
ピアノ بيانو ビヤーノ 「ピアノ」は、アラビア語圏では主に西洋音楽で使われ、伝統的な音楽には登場しません。
バイオリン كمان カマーン クラシック音楽のほか、中東の民俗音楽でも「カマーン」として独自の奏法で使われます。
ギター جيتار ジータール 西洋音楽の楽器ですが、現代アラブポップスなどで広く使われています。
ドラム طبلة タブラ 「タブラ」はアラブ圏の太鼓を指す言葉ですが、ここでは西洋のドラムセットを指す一般的な呼び方です。
ベース باص バース アラブ音楽には伝統的に低音を担う楽器は少ないですが、現代音楽では西洋のベースが使われます。
トランペット بوق ブーク 「ブーク」は「ラッパ」を意味するアラビア語です。主に軍楽などで使われます。
フルート فلوت フルート 「ナーイ」という伝統的な竹笛がありますが、西洋のフルートも区別して使われます。

 

旅がもっと楽しくなる!アラビア語講座

今日の探検の記念に、アラビア語で「音楽」という言葉を学んでみましょう。

  • 音楽: مُوسِيقَى (mūsīqā)
    • カタカナ: ムースィーカ
    • 発音のポイント:
      • مُو (mū): 唇をしっかりすぼめて「ムー」と発音します。
      • سِيقَى (sīqā): 「シー」の音は日本語の「シ」よりも強く、息を出すように発音します。
      • 全体をスムーズにつなげ、「ムースィーカ」と発音しましょう。

 

まとめ:中東の楽器は、文化を語る物語だった!

今回ご紹介した、中東の楽器はいかがでしたか?
中東の楽器は、単なる音を奏でる道具ではなく、その土地の歴史や文化を物語る存在でしたね。

  • ウードは、アラブ音楽の心を歌う「ギターの祖先」。
  • ダルブッカは、人々の心を躍らせる「リズムの神様」。
  • カーヌーンは、聴く人を幻想の世界へ誘う「アラブのハープ」。
  • そして、アラブとペルシャという二つの文化が、中東音楽の奥深い世界を作り上げています。

もし中東の音楽を耳にする機会があれば、ぜひこれらの楽器が奏でる音色に耳を傾けてみてください。きっと、これまでとは違う、新しい発見があるはずです。

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